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撃ち抜けないのは、美女の心と物事の急所だけさ。

<前回までのあらすじ>

→富士登山2012 その1 -初めての富士山-
→富士登山2012 その2 -登山の心得-
→富士登山2012 その3 -吉田ルート-
→富士登山2012 その4 -八合目~九合目-

 

吉田ルート最後の山小屋となる「御来光館」でしばし休憩したのち、
キューブ君、にゃごちゃん、ヤマグチ君と共に
再び山頂を目指して登り始める。

日の出予想時刻の4時43分まで、あと40分。

ヘッドライトがジグザグに続く登山道の先に視線をやると、
少し先にひときわ明るい光が見える。

きっとあそこがゴール。
ついに山頂が見えてきた。

左手にも光の道が見える。
あれは別の登山ルートか、それとも下山道か。

いずれも登山客でびっしり埋まっているようだ。
ゆっくりゆっくり光が登っていくのが見える。

後で知ることになったのだけど、吉田ルートの登山道と下山道は、
本八合目の山小屋「江戸屋」付近から
お互いに行き来ができるようになっている。

「もしかすると、この混雑状況を見た一部の登山ツアーが
 下山道を逆走して登り始めているのかもしれない」

他の登山客がそんなことを話しているのが聞こえてきた。

そんな登り方もあるんだな。

帰りのバスの時間が決まっているから、
ご来光を見たらすぐに下山しなきゃいけないらしい。

登りの混雑がひどいと、時間的な余裕はさらに厳しくなるから、
時々そんなツアーガイドを見かけるそうだ。

でも、正直そこまでして山頂で御来光を見なくてもいいかなぁ。
振り向けば、そこは視界いっぱいに広がる大パノラマが広がっている。

今回は、それで充分だ。

ウチらはウチら。
登山道の途中で、日の出を迎えよう。


八合五勺の標識を越え、九合目の鳥居が見えてきた。

風雨に晒され、激しい寒暖差で古くなりひび割れた鳥居には、
小銭がいっぱい詰まっていた。

誰が始めたのか分からないけれど、気持ちは分かる。
でも実際に自分はやったことがない。

そもそも有料トイレ用にと思って持ってきた
小銭を受け取る神様も気の毒だし。


空は、地平線の先から徐々に赤らんできていた。
月明かりに照らされた岩肌が明るい。

あまりに明るくて、
自分のヘッドライトの光が弱くなってきていることにも気が付かなかった。

そういえば、つくば100キロウォークでも
このヘッドライトで夜通し道を照らしながら歩いていたな。

あのときはヘッドライトに向かって小さな羽虫が突っ込んできたものだけど、
標高 3,000m を越えると虫らしい虫もいない。

森林限界はとうの昔に越えて来た。
思えば遠くに来たものだ。

凛と張った冷たい空気が火照った身体に心地よい。

山頂付近の気温は4度くらいって話だ。
微かながら風もあるし、体感温度はきっともう少し低い。

空気が薄く、普通に呼吸しているだけだど少し息苦しい。
歩きながら、大きな深呼吸を繰り返す。

息切れするほどのペースで歩いている訳じゃないのに、
それでも動悸が激しい。

心臓も身体中に酸素を送り込むためにフル稼動しているようだ。

吊り橋理論じゃないけど、言われてみればここまで一緒に頑張って、
励まし合って登ってきたメンバーが愛おしく感じる。

これは異性と登れば間違いなく恋に落ちる音がするはず。
危険だ。富士山は危険だ。

このヘッドライトと歩くときは、いつもこんな状態だな。
そういや電池を変えてくるのを忘れてた。


前の人が進めば、ウチらも進む。
前の人が立ち止まれば、ウチらも立ち止まる。

追い抜くようなスペースはほとんどない。

周囲を見渡すと、いつの間にか座り込み、
ご来光を見ようと準備をしている人が大勢いることに気が付く。

もうそんな時間なんだ。

振り向くと、刻一刻と姿を変える朝焼けの空に目を奪われる。

徐々に色づいてくる雲海の隙間から、微かに街の明かりが見える。
三日月型の湖も見える。山中湖だろうな。

再び視線を戻す。前の人が進んでいる。ウチらも進む。
立ち止まり、再び振り向いて景色を眺める。

しばらくの間、ずっとそんな感じで歩いていた。


現在地は九合目の鳥居と山頂のちょうど中間地点くらいだろうか。
登山道には人が溢れ、山頂までずっと行列が続いている。

進まない、進めない。

あと少し、もう少しだけ山頂に近い場所で、と考えて
登ってきたけれど、きっと、ここが限界だ。

これ以上チャレンジしても、
御来光が終わるまで恐らく状況は変わらないだろう。

山頂も満員で入れないんだろうなーなんて思う。
上が詰まっているから、この人たちも動くに動けないんだ。

キューブ君、にゃごちゃん、ヤマグチ君と相談して、
ここで御来光を迎えることにしよう。

聞いてみたら、みんな同じ気持ちだったみたい。
声を掛け合い、登山道の脇に移動する。

ほどんどの人がそうしているように、
登山道から1歩外れた山側の斜面に腰を下ろす。

時計を確認すると、4時30分。
御来光まで13分。

深呼吸をして、カメラを構えて、写真を撮って、
馬鹿な話をしながら御来光を待つ。

見渡す限りの大パノラマ。

空が、雲が、森が、街が、ただそこにあるだけなのに、
嘘みたいに美しい。

それらが徐々に、少しずつ少しずつ赤く染まっていく。

どこかの物語の迷い込んでしまったような、幻想的な風景だった。

写真を撮るのも忘れて、ただただ眺めていた。
気が付いたら、涙が流れていた。

達成感から来る涙ではないと思う。
だってここは山頂ではないから。

綺麗なものは、ただそれだけで人の心を打つんだ。

絶景ってのはこういう景色を言うんだろう。

100キロウォークのゴールで見た景色とは違う。
マラソンを走り切った先で見た景色とは違う。

富士山には、富士山の景色があった。
そしてそれらは、他と比べられるものではないんだ。

つきっこの他のメンバーはどうしてるんだろう。
先発隊はもう山頂に着いたんだろうか。

あららちん、ちーちゃん、ウコンさんの3人は
今どのあたりにいるのかな。

でもきっと、今この瞬間はこの景色を見てるに違いない。

せっかくなら一緒に見たかったけど、
こればかりは仕方のないことだ。

嫁とも一緒に見れたらいいのに。
こんなに綺麗なのに。帰ったら写真を見せて説得してみよう。

※無理でした

どれぐらい時間が経ったんだろう。

いつの間にか太陽はすっかり顔を出し、
周囲はずいぶんと明るくなっていた。

見上げれば、一面の青空が見える。
山肌で御来光を見ていた他の集団も、次々と登山道に戻っていく。

登り始めた登山客が動き始めるまで、
しばらくそのまま斜面で休憩をしていた。

そろそろ行こうか。

御来光は見た。
次に目指すは、日本の頂!


御来光を見た場所から、山頂までは本当にあっという間だった。

あれほど動かなかった登山道が嘘みたいにスムーズに進んでいった。
やっぱりみんな御来光を見てたんだ。

5時30分。スタートからちょうど8時間が経過。
キューブ君、にゃごちゃん、ヤマグチ君、桶屋の4名は山頂に到着した。

とうとう辿り着いた。4人とも無事に登ってこれた。
山頂で記念撮影。

山頂の売店を抜けて、少し広くなった岩場で
moonさんたち先発隊と合流。

堅い握手を交わす。

下のコンビニで買ってきたおにぎりが美味い。
売店で買った温かいコーンポタージュ(400円)がめちゃくちゃ美味い。

売店で温かいラーメンも売っていた。
日本一高いところにあるラーメン屋なんだろうな。

値段も高そうだ。
まだ早朝だというのに、ものすごい活気。

それぞれ荷物の整理をしたり、横になって休んだりしながら、
他のメンバーが来るのを待つ。

その間、かねてより山頂に郵便局があるって聞いていたので、
持ってきた嫁宛ての葉書にメッセージを書いた。

喜んでくれるだろうか、なんて考えながら郵便局を探した。
ても、見あたらない。

売店のあんちゃんに確認したら、
どうやら郵便局は吉田ルートの頂上から20分くらい歩いた先にあるらしい。

売店で買った葉書なら売店の人が届けてくれるみたいなんだけど、
持ち込んだ葉書だと届けてくれないみたいだ。

ここからさらに20分も歩くなんて嫌過ぎるので、
結局、葉書は下山後に嫁に手渡した。

もはや何が何だか(笑)


6時過ぎに、大島君と中山さんが来た。
7時ちょい手前ぐらいに、あららちんも来た。

でも、ちーちゃんとウコンさんは登って来なかった。

九合目付近でちーちゃんが体調を崩し、
ウコンさんはそれに付き添い一緒に下山をしたそうだ。

100キロともマラソンとも違う、富士山の難しさを感じた。


11人が揃ったところで、かのかと一緒に
カービィさんが買ってくれたヘリウムガスを吸ってヤッホーをした。

リュックはパンパンだったけど、
これだけは絶対に持って行けと言われてた。

みんな爆笑してた。
持ってきた甲斐があった。

軽いけど嵩張るんだよね。

本当はカップヌードルもここで食べる予定だったんだけど、
マイクロバスの時間が迫っていたので、それだけは諦めることにした。

これも結構嵩張ってたんだけどね。
ちょっと残念。もし食べてたら死ぬほど美味かっただろうな。

最後に、登ってこれた全員で記念撮影をした。

何枚も、何枚も撮った。
どうだオレたちここまで来たぞって、勲章みたいな写真だ。

きっと一生忘れられない思い出になる。
ここが富士山の頂上だ。


山頂にあるもうひとつの鳥居を抜け、
一行は下山を開始する。

そこでウチらは身を持って思い知らされることになった。

登って来た分は、降りなければならない。
当然の理。当たり前のことだ。

山頂はゴールじゃなかった。
まだまだ続く、富士山の折り返し地点に過ぎなかった。

マジかよ・・・

長い長い富士登山の体験記。
あともう少しだけ、お付き合いください。


→その6につづく

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HN:桶屋が儲かる

都内在住、30代バツイチ♂
多感な青春時代に
伊集院光を聞き育つ。

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