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<前回までのあらすじ>
→つくば100キロウォーク2012 その1
→つくば100キロウォーク2012 その2
→つくば100キロウォーク2012 その3
→つくば100キロウォーク2012 その4
→つくば100キロウォーク2012 その5
→つくば100キロウォーク2012 その6
すっかり明るくなり、暑さも増してきた日差しの中で
久し振りの市街地を抜け、交差点と橋を渡った先に見えてくる高架下に、
80km地点の休憩所はある。
最後の折り返し地点となる土浦休憩所だ。
時計の針が朝6時を少し過ぎた頃、
moonさん、カービィさん、あららちん、そして自分の4人はそこにいた。
去年より少し時間が早いせいなのか、天候が良かったせいなのか、
休憩所は思いのほか多くの参加者で溢れていた。
スタートから既に17時間が経過、
100km制限時間の24時間までは残り7時間弱。
前半は去年よりもかなり速いペースで歩いてきたつもりだったけど、
ここまでたどり着く時刻が去年とそこまで変わらないのは
途中でずいぶんとペースが落ちてしまったせいだろう。
ゴールまでは残り20km、ここの足切り(閉門時刻)設定が9時なのだから
時間だけならまだ余裕があるように思われた。
たぶん、制限時間内にはゴールまで歩けるだろう。
でも、もしかしたらmoonさん達とは
一緒にゴールできないかもしれないなって思いが少しだけ頭をよぎった。
この先、自分が今のペースを維持できるとは思えなかったからだ。
体力も限界だったし眠気もあった。
彼らと一緒にゴールするためには、
どこかで余計に休む必要があると感じていた。
硬くなった足を折り曲げ、青いビニールシートの上に重い腰を下ろすと、
4人は思い思いの恰好でしばしの休憩を取る。
前屈したり開脚したり、少しでも足の疲労を抜こうとしたけれど
乳酸の溜まった足はなかなか言うことを聞いてくれない。
フルマラソンのときもそうだったのだけど、
100kmウォークのような長距離、長時間の運動をする場合は、
ペースは多少ゆっくりでもいいから足に負担のかからないように歩くことが
結果として早くゴールまでたどり着くコツなのかもしれない。
あららちんとカービィさんは、そこに置いてあったのか、
それとも誰かが持ってきたのか分からなかったけど
折りたたみ椅子みたいなものに腰かけていた。
いいなぁあれ、なんかラクそうだ。
土浦休憩所では、我々4人より一足先に歩いていた
つきっこの誇るアスリート3人娘、さおりさん、につけちゃん、さぶれちんの
チームキャッツ・アイと再開することができた。
口を開けば愚痴しか出てこないような満身創痍の状態ではあったけど、
思ったより元気そうな彼女たちと笑いながら話すのは楽しかったし、
刺激の少ない道中では見知った顔と出会えるのが何よりの気分転換だった。
仲間との再開。
つくば100kmウォーク大会に
チームとして出場する最大のメリットは、これだ。
73kmの藤沢休憩所を出発し、80km土浦休憩所を経て、
再び87kmの藤沢休憩所まで戻るまでの14km。
この区間では、自分より早いペースで歩いている人達には往路で、
遅いペースで歩いている人達とは復路で、
自分が歩き続けている限り、必ず誰かとすれ違うことができる。
果てしなく続くようなりんりんロードの遥か彼方の先から
徐々に近づいてくる赤いチームTシャツを見つけたときの嬉しさは格別で、
75kmを過ぎたあたりから、気がつけば赤い色を探すようになり、
ひとたび目に入れば、段々と大きくなるシルエットを夢中で追うようになる。
そして近づき、一言二言の会話を交わし、ハイタッチをして、
ほんの少しの元気を貰う。
互いが互いの健闘をたたえ、成功を祈り、無事を願う。
今年のつくば100kmウォーク大会に参加した
つきっこメンバーならびに関係者24名が、
それぞれ何らかの形で再会できる最後の場所がこの区間。
次に彼らと会うときは、もうゴールなのだ。
40km岩瀬休憩所の周辺でも同じように折り返してくる仲間と
出会うことはできるけど、ここに来ての再会は
もっと特別なもののように感じられた。
赤いシャツを見つけてから、その余韻の効果が切れるまで、
それは距離にして数100メートルもないかもしれないけれど、
その瞬間だけは、歩くペースや残りの距離のことを忘れることができた。
そのほんの少しの時間が、とてもありがたかった。
太ももにロキソニンを塗ったり足裏のケアをしたりしていると、
運営が設置したラジオからラジオ体操の懐かしい音楽が流れてきた。
あららちんが「ちょっと動いてくる」と身体を動かしに行った。
音楽に合わせて腕を振ったりジャンプしたりするあららちんを見ながら、
どんだけ元気なんだろうって思ったのを覚えている。
明け方になるにつれ、どんどん元気になっていくあららちん、
身体のどこかにもうひとつのエンジンを積んでいるようだった。
ラジオ体操の放送時刻が6時30分であることを考えると
また少し休み過ぎてしまったようだ。
残りは20km、まずは7km先の藤沢休憩所を次の目標に設定し、
冷えて固まった筋肉に悲鳴を上げながら、4人は再び歩き出した。
80km土浦休憩所からどれくらい歩いた頃だろう。
きっとそんなには離れていないはずだ。
すっかり高く昇った太陽によって、
自分の残り少ない体力は容赦なく削られていった。
日差しは強く凶暴なのに、それを遮る木陰も見あたらない。
ただ歩いているだけなのに、
動悸息切れが激しく、しゃべるのもおっくうになってきていた。
頭がぼうっとして熱があるような感覚なのに、腕に触ると少し冷たい。
自分の身体が自分のものではないみたいだった。
熱中症対策としてこまめに水分補給をしていたつもりだったけれど、
汗も出なくなってくるようなら、いよいよヤバい。
冷たいシャワーを頭から思いっきり浴びたい。
ってか涼しいところで横になるだけでもいい。
一緒に歩いているmoonさんたちには
ペースを落としてもらったり手を引いてもらったりしていたけれど、
いよいよ何か手を打たなきゃってくらいヘバッてきているのが分かった。
今年はmoonさんのゴールが最優先なんだから、
自分が足を引っ張って、これ以上ペースを落とす訳にはいかない。
少しずつ、自分のことはいいから先に行って欲しいと漏らすようになった。
その状態を心配してくれた3人は
次の陸橋が見えたらそこで少し休もうと提案してくれた。
畜生、だから君らが好きなんだ。
早くオレをこの地獄から解放しやがれ(笑)
しばらく歩くと陸橋が見え、
そこで再び休憩をとることになった。
短時間の間に何度も休憩を取るのは決して望ましい状況ではないけれど、
日陰が恋しかったし、何よりそこは涼しかった。
陸橋の下は風の通り道にもなっているようで、
火照った身体を包む風の流れが心地よい。
皆に先に行って貰って、しばらくここで休んでいこうと思った。
少しでも体力を回復させないと。
そう思いながら束の間の休息を満喫していると、
ジョギングをしていた御年配のランナーの方がふと立ち止まり、
「こんにちはー」とウチらに突然話しかけてきた。
ものすごく失礼な話なんだけど、少し嫌な予感がした。
「みなさんゼッケン付けてますけど、何かの大会なんですか?」
「こんにちはー」と声にならない音を絞り出しつつ、
無意識にあららちんに視線を送る。
ごめん、対応お願いします、と。
2012年大会では、moonさんがゼッケン1、あららちんがゼッケン2を
つけていたおかげで、道中幾度となく通行人に話しかけれたのだけど、
その対応はいつもなんとなくあららちんがやってくれていた。
この紳士の対応も例に漏れず、あららちんが丁寧に
大会の概要や現時点の歩行距離なんかを説明してくれた。
視線は紳士に向けたままだったけれど、
あららちんとの会話は右から左に流れていく。
「あっゼッケン1番と2番の方じゃないですか!」
聞くともなく聞こえてくる会話の内容に、
再びちょっと嫌な予感がした。
「お疲れのところ申し訳ないのですが、
写真を撮らせていただいてもよろしいでしょうか?」
嫌な予感、的中。
ただ、丁寧な言葉使いや、競技者に対する敬意が感じられる話し方で、
きっとこの方も何かの大会に出たりするんだろうなと思っていたから、
これもご縁だし、まぁいいかって感じで立ちあがる。
ところが、陸橋下で4人並んだ写真を撮影した
紳士の表情がどうも優れない。
ここからはカービィさんの2012年6月14日の日記を引用させていただくよ。
何枚か写真を撮ったおっちゃんは
「やっぱり逆光になっちゃいますねぇ」
「お疲れのところ悪いんですがちょっとこちらまで来て頂けますか?」
と、照りつけられたアスファルトを指差す。
マジすか?
さすがにオレ達も暑くてしんどくて、
それで日陰で休んでいるのに
日向に出ろとかお前何言ってんの!?思いながら桶さんを見ると、
なんとも言えない、苦虫を噛んだみたいな顔してましてね(笑)
オレあの時の桶さんの顔一生忘れない(笑)。
正直、「おいJJIwwマジで空気読めwww」って思ってました(失礼)。
後日談になるけど、この紳士とは
富士登山前に練習として登った筑波山でも偶然再会した。
土浦で開業されているお医者様なのだそうで、
2013年のつくば100kmウォークにもエントリーされたらしい。
本当に不思議なご縁だと思う。
3度目の再会、楽しみにしています。
陸橋下での予想外の撮影タイムが終わり、
一行は再び歩き出すことになった。
ただ、思ったより体力が回復しなかったことと、横になって休むのであれば
恐らくこのタイミングしかないと考えていたこともあって、
moonさん、あららちん、カービィさんには先に行ってもらうことにした。
また、もう少しぶっちゃけてしまえば、
少しだけ1人になりたいって気持ちもあった。
去年は否応なく1人で歩く時間があって、
それは決して心地よい道のりとは言えなかったのだけれど、
でも、少なくともその時間は全身全霊でもって
100kmウォークと真摯に向き合った時間だったように思う。
仲間と歩く時間も楽しいけれど、
ただただ1人で歩く時間も捨てがたい。
そういう意味では、今年の大会はありがたいことに
1人で歩く時間がほとんど無かったから
誰に気を使うでもなく、使ってもらうでもなく、
ただただ道と向き合う時間を作りたいと考えていた。
「分かった。
立ち止まっていられないから、先に行くけど、
オレ達、今年は4人でゴールするんだからね。
一緒にゴールするんだから。
じゃないと意味がないんだから。
ゆっくり歩いてるから、
絶対あとから追いついて来いよ。」
そう言い残して歩き出したmoonさん、あららちん、カービィさんの
後ろ姿を眺めながら、少しの間だけ横になる。
水で濡らしたタオルを顔にかけ、目をつぶる。
moonさんの言葉が嬉しかった。
オレだって、ここまできたら今年は絶対に一緒にゴールしたい。
この1年間、本当にいろいろなことがあった。
生まれて初めてマラソン大会に出た。そのあとフルマラソンも走った。
チームでリレーマラソンもやった。そのどれもが楽しかった。
オレ、頑張ってきた。
だから、どうか少しだけご褒美を下さい。お酒以外の。
どうか、どうか皆と一緒に、手をつないでゴールさせてください。
誰に祈るわけでもなく、そんな想いが胸に溢れる。
だから、自分はあまり長い時間は休んでなんていられない。
この状態で大きく離されたら、きっともう追いつけない。
そんなことを考えながら涼んでいると、
遠くから聞きなれた声がするのがわかった。
少し顔をあげて確認すると、そこには心配そうな表情で
Akiさん、にゃごちゃん、ぐらくまさんが立っていた。
にゃごちゃんがスカートだったら素晴らしいアングルなのに、って思った。
ただ残念ながらトレパンを履いていた。
少し元気出た。
今年初参加のこの3人、それぞれ全く面識がなかったはずなのに、
ここまでこの3人で歩いてきたんだと思うと
とても意外な組み合わせのように感じた。
でも、なんかしっくりきた。
きっとマラソンや謎解きの話なんかをするんだろうなって思った。
ちょっと熱中症気味で・・・と話すと、
ぐらくまさんが「塩熱飴」ってキャンディーをくれた。
汗で失った電解質を素早く補給するサプリのようだ。
熱中症の予防にもなるらしい。
ありがたい。お礼を言い、もう少しだけ横になって休むよと伝えると、
彼らにも先に行ってもらった。あとで必ず追いつくから、と話して。
これでチームのメンバーは全員先に行ったことになる。
みんなはえーなぁオイ。
横になったまま目を閉じて、60秒数えることにした。
1分だけ休んだら、また再び歩き出そうと決めた。
もう少し長くこの場に留まりたいという気持ちはあったけれど、
もしここでぐずぐずしていると、
また考えが変わってしまうかもしれないと思った。
長い長い旅の終わりをようやく掴まえた気がしていた。
だから、立ち止まってその潮時を失うのが怖かった。
87km藤沢休憩所にようやくたどり着くと、
向こうから赤いシャツを着た誰かが手を振っているのが見えた。
そこにはさおりさん、につけちゃん、さぶれちんのチームキャッツアイ、
Akiさん、にゃごちゃん、ぐらくまさんの3人もいた。
80kmから87kmの途中で応援に駆けつけてくれた
moonさんの奥さんや長女ちゃん、次女ちゃんもいた。
そしてもちろん、moonさんもあららちんもカービィさんもいた。
追いついた、そして待っててくれたんだと思うと嬉しくなった。
時刻は8時30分を過ぎたあたりだと思う。
7km歩くのに2時間もかけてしまった。
残りは13km。いよいよここが最後の休憩所だ。
靴を脱いで腰をおろし、青々と茂った芝生の上で大の字になった。
気持ち良かった。
脱ぎ捨てた靴の底が見え、そこに赤い染みが出来ているのが分かった。
親指とかかとのあたりに出来た血豆が潰れたようだ。
ああ、なんかチクチク痛かったのはこいつらのせいか。
応急処置として、テーピングを巻くことにした。
去年よりは幾分マシな状態だ。
周囲を見回す。
去年は雨が降っていたせいで芝生部分がほとんど使えなかったけれど、
今年は各々思い思いの場所で参加者たちが休憩を取っているのが見えた。
段差を利用してストレッチする者、食事をとる者、眠る者。
最後の休憩を終え、ゴールに向かって歩き出す者、そしてそれを見送る者。
少し前まであれほどに辛い思いをして歩いていたことが夢だったかのように、
のどかなくらいの絶好のピクニック日和だった。
ゴールしたら、オレも寝てやる。
一足先に、チームキャッツアイが出発した。
「私ら歩くのが遅いから」って話してたけど、
とうとう最後まで追いつくことはなかった。
彼女たちは最後まで一定のペースを維持して歩き抜け、
自分たち4人よりも早いタイムでゴールをした。本当にすげーよね。
そこにいた全員が円陣を組んで、
moonさんが「次はゴールで会おうな!」って掛け声をかけた。
歩き出す3人に手を振りながら、
仲間を見送る感覚ってこういう感じなのかなって漠然と思った。
ここが最後の踏ん張りどころ。
ゴールまでの13km、またあの13kmがやってくる。
知らない人に100kmを歩いてきたと話すと、
よくどこが一番辛かったかと聞かれることがある。
それはね、ゴールまでのラスト13kmだ。
間違いなく、最後が一番辛くて痛くて激しくて長い。
それがラスト12kmになるとさらに辛いし、
ラスト11kmになったらもっともっと辛い。
ラスト1km?そこなんてもう最悪だ。
もう99km歩いてようが何だろうが、まだ1kmも残ってんのかよって思う。
ふざけんなここでリタイアしてやろうかって気持ちでいっぱいになる。
だってあと1kmなんでしょ、と誰も信じてくれないんだけどね。
100kmウォークにラストスパートなんて言葉はない。
もし気持ちの最後のひと押しができる場所があるとすれば、
それはここ、87kmの藤沢休憩所だけだなんだ。
9時を過ぎ、いよいよ歩き出そうって雰囲気になった。
カービィさんがmoonさんに声をかける。
「今年はむんさんの番だよ」みたいな感じで。
去年、参加者としてのmoonさんはここにいなかった。
だから、カービィさんが号令をかけた。
でも、今年はmoonさんがいる。
丸くなってみんなで手を重ねながら、
今年1月に受け取ったメールを思い出していた。
つくば100キロウォーク、
今日からエントリーが始まりました。
もう負けねーから、
たとえ足が千切れても、
這ってでもゴールするから。
だからもう1回だけ挑戦させて下さい。
もう1回だけ僕と一緒に歩いて下さい。
僕と一緒に戦って下さい。
仲間として。
お願いします。
円陣を組み、moonさんが声を掛けた。
「ラストいくぞっ!!」
そこにいた全員の「オオッ!」って声が、
そこにいた全員の気持ちを表していた。
最後の13kmが、始まった。
長い長い100kmウォークの物語。
あと1話だけ、お付き合いください。
→その8へつづく
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