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撃ち抜けないのは、美女の心と物事の急所だけさ。
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8月2日に登った妙高山の登頂記「その4」です。
よろしければ「その1」からお読みいただけるとより楽しめると思います。

→妙高山登頂記 その1 -3つの登山ルート-
→妙高山登頂記 その2 -妙高高原駅~笹ヶ峰高原-
→妙高山登頂記 その3 -笹ヶ峰駐車場~富士見平分岐-


◆富士見平~黒沢池

9時45分。
富士見平分岐にあった地図でこれからのルートを確認し、
出発前に深く大きな深呼吸。

肺の中が高原の空気で満たされ気持ちいい。
意気揚々と妙高山に向けて歩き始める。

分岐を抜けると登山道はゆるやかな下り坂になっていた。
道を囲む木々の背は低く、そこから見える空が広い。



他の登山客は火打山頂を目指すのか、
妙高山方面に向かう人はほとんどいないようだった。

前にも後ろにも誰もいない、むき出しの山道を独り歩いていると
この世界に自分だけが取り残されたような感覚になる。
自分の息遣いと足音だけが等間隔で響き、
それ以外に聴こえてくるのは虫の鳴き声と羽音だけ。

この感覚、久し振りだ。
夜明け前のりんりんロードを歩いているときのような、あの感覚。

あのときと違うのは、刻一刻と変化する景色だろう。
目の前には山の緑と空の青、そしてそこに浮かぶ雲の白が
太陽の光を浴びて色鮮やかに輝いている。



先々週に行ったキャンプ場では天候に恵まれず
ほとんど曇天しか見れなかったけれど、
晴れていればこんな景色が待っていたと思うと、
ちょっと惜しいことをしたと思う。viva太陽。

でも少し雲が出てきたようだ。
先を急ぐことにする。

歩き進むこと10数分、突然視界が開ける場所に出た。
そこには、息をのむような風景が広がっていた。


鞍部に広がる見渡す限りの大草原。
白い綿毛をまとったワタスゲが至る所に咲いている。

自分以外の誰もいないその場所は
まるで現実味がなく、あたかも夢の中にいるような
幻想的な風景だった。

タイマーを使って1枚。



遥か彼方まで広がる緑の絨毯を撫でるように、
白い雲が風に乗り流れていく。
ここは「天空の城ラピュタ」か。



何も無い大草原に通る1本の道を進む。

少し歩いたところに小川が流れており、
道はその小川の先まで続いている。
そこには2本の丸太で作られた簡素な橋が掛けてあった。



バランスを崩さぬよう、その上をゆっくりと進む。


ここは湿地帯なのだろうか、
橋を越えると、板張りの道が続いていた。

遠くに池らしきものが見える。
とすると、恐らくあれが「黒沢池」。
笹ヶ峰の駐車場から出てすぐの場所を流れていた
あの「黒沢」の上流にあたる場所だろう。



心が洗われる。

あのときバスを乗り間違えなければ、
きっとこの景色に出会うこともなかった。

この世界は期待をよく裏切るけれど、
期待していなかった喜びに時々出会える

amazarashiの曲にそんな歌詞があったような。
だから人生は面白い。最高の気分だった。


◆黒沢池ヒュッテ~長助池分岐

10時23分。誰もいない黒沢を抜けると、
丸いドーム型の屋根をした山小屋が見えてきた。

山小屋の前にはいくつかベンチが設置してあり、
そこで何人かの登山客が荷物を整理したり
食事をとったりしている姿が見える。

ずいぶんと人と会ってなかった気がする。
もしかするとこのルートから妙高山に登るのは
自分しかいないんじゃないかと考えていたほどだ。

トイレも設置されていたが、どうやら有料の様子。
でも幸いなことにまだ尿意は感じない。

ここでも長く休憩するつもりはないので、
小屋のそばにあった分岐点の案内標識を確認する。



標高は2,000m、高低差だけなら山頂まであと500mほど。
野草に隠れて見づらいけれど、妙高山の標識もある。
次の「大倉乗越」まで距離にして620m、一気に進もう。



10時36分、15分ほどで「大倉乗越」に到着。
我ながら悪くないペース。

しかし順調に進めたのはここまで。
ここのから先のバラエティに富んだ登山道の数々は、
富士山のそれとはまた違った厳しさが待っていた。

仙人が出てきてもおかしくないような、
ガスに囲まれた山道を進んでいく。



ごろごろとした岩を足場によじ登るような道があったと思えば、



今度は山の斜面に通る筋みたいな道を抜け、



もはや単に「草が生えていないだけ」といった感じの
獣道のような山道を歩いていく。



草木を掻き分けつつ進むと、
今度は残雪の残る川が見えてきた。



・・・というより、これは川でなく雪そのもののようだ。
谷間に降り積もった雪が夏になってもなお解けずに残り、
それが川のような形で残っている。

「雪渓(せっけい)」というらしい。

近づくと、ところどころ解け落ちて穴が開いているようだった。
その穴からは川底に転がるような大きな岩が覗き、
そこに雪解けした水がちょろちょろと流れている。



「これはまた珍しいものが見れたな」

なんて満足感に浸れたのも束の間、
周囲を見ながら、ふとした異変に気が付く。

登山道が、ない。

いや、正確にいえば登山道らしきものは見える。
この雪渓の対岸に。

雪渓を挟んだ先にある、その向こう側の岸に一か所。
何か、こう、道の入り口らしき
草木の生えていない場所があるのだ。

自分が歩いてきた道は、まっすぐ、この雪渓に続いている。
そして道は雪渓のある場所でぶつりと途切れ、
周囲に迂回路らしきものが全くない。

実に嫌な予感がする。
もしかして、これ、この雪の上を渡るの・・・?

人が乗れば踏み抜いてしまいそうな雪の川、
ところどころに穴が開き、その下に流れる雪解けの水。

確かに注意して目を凝らしてみれば、雪渓の上に一筋、
人が歩いて付いた道のような汚れが見える。

地形の影響でどこかが薄くなっているかもしれないし、
運が悪ければ踏み抜いて怪我する可能性もある。

でももう、こうなったらもう度胸試し。
ここまで来たら前に進むしかない。

何より、今までの道を戻るのは嫌過ぎる。

雪の上に登れそうな場所を探し、
体重を乗せる前に手で叩いてその厚さ、硬さを確認する。
見た目より頑丈そうな感じがする。なんとか行けそうだ。

意を決して雪の上によじ登る。
1歩、また1歩と足場を確認しながら前に進む。

やっとの思いで雪渓を抜け、長助池の分岐点についたのは、
時計の針が11時を少し過ぎた頃だった。



妙高山頂まで、あと1.0km。


→その5に続く
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