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撃ち抜けないのは、美女の心と物事の急所だけさ。
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8月2日に登った妙高山の登頂記「その3」です。
よろしければ「その1」からお読みいただけるとより楽しめると思います。

→妙高山登頂記 その1 -3つの登山ルート-
→妙高山登頂記 その2 -妙高高原駅~笹ヶ峰高原-


◆駐車場~黒沢

8時10分、笹ヶ峰到着。
頭上には雲ひとつない青空が広がり、
涼し気な高原の風が心地よい。

 

まずやるべきは情報収集。
なんたって笹ヶ峰からの登山ルートなんて
順路も所要時間も一切の情報収集してないからね。

分かっているのは「新赤倉ルート」よりも
距離が長く、時間がかかるであろうこと。

問題はそれが日帰りで行ってこれる時間かどうかだ。
実を言うと、自分以外の登山客が背負っている
リュックの大きさに内心かなりビビっていた。

中には寝袋を背負っている人もいて、
もしかすると日帰りは難しいルートなのかもしれない。

さっそくiPhoneを取り出して、検索を・・・と思ったら、
画面左上に燦然と輝く「圏外」の文字。

これぞSoftBankクオリティ、まさに予想GUY。
富士山はもちろん、先々週の無印津南キャンプ場でも
問題なく繋がっていたから、完全に油断していた。

後悔先に立たず、携帯役に立たず。

・・・まぁでも仕方がない。
いいじゃないかこれも旅の醍醐味、
ここまで来たんだ、腹を括ろうじゃないのよさ。

今日の夕方、東京に帰る予定だったのだけど、
幸い急ぐ旅でもない。
いざとなったら伯母さん宅にもう1泊して帰ろう。

覚悟を決めたら話は早い。
そんな訳で、さっそく登山口に向かうことに。

 

小さな小屋のような登山口は
バスの停留所から歩いてすぐの場所にあった。
そこで他の登山客が何かを書いているのが見える。

どうやら「登山届」のようだ。

名前や住所に電話番号、緊急連絡先、単独登山か複数か、
そして今回の登山コースと下山予定時刻等々、
夏用だからなのか、想像よりもずっと簡易な様式だった。

生まれて初めての単独登山、
少しドキドキしながら登山届を記入して、
錠のかかった無人のポストに投函する。

幸い登山口の近くには登山道の案内看板が設置してあり、
今日のルートを確認することができた。

どうやら火打山に登るルートから途中で分岐し、
妙高山頂に向かうことができるようだ。
見た感じ、かなり距離はありそう。
気合を入れて登らないと今日中に帰れないかもしれない。

でもとりあえず妙高山頂までのルートが
イメージができたことで少し安心できた。

紆余曲折あったけど、とうとう出発だ。

 

歩きだしてすぐの登山道は
板張りで補強されており、とても歩きやすかった。
登山道というより緑の散歩道とでも表現したくなるほどだ。

風にそよぐ木々のざわめきと、野鳥の鳴き声が木霊する。
時折聴こえる耳障りな虫の羽音を除けば実に心地よい。

夏の木々は青々と茂っており、
正直、すぐそこの木陰からいつ熊や猿が顔を出しても
不思議ではないほど力強い野生を感じることができた。

歩くこと30分、大きな川のせせらぎが聴こえて来る。
しばらくすると森が開け、目の前に小さな橋が見えた。
傾いた標識には「黒沢橋」と書かれている。

 

とすると、ここが地図にあった「黒沢」だろう。

 

これぞ渓流って感じの透き通った水の流れは
この一帯の空気をも洗い流してくれる感じがする。

澄んだ空気はひんやりとしており、
汗ばんだ肌に気持ちよく浸透する。至福。

しかし、今日は時間の読めない登山道。
しばらくここに居座りたい気持ちをぐっと堪え、
先を急ぐことにする。


◆十二曲り~富士見平分岐

黒沢を抜けしばらく歩くと、
すぐに「十二曲り 1/12」の標識を発見。

そういえば地図にもそんな場所が記載されていたような。
文字通り、12回つづらに登っていく山道のようだ。

これまでの道程に比べるとかなり勾配がきついものの、
足元には木の階段が整備されており
階段を上がるような感覚で登ることができる。

この階段は数年前に完成したものらしいから、
それまでの登山客が要する労力は今の比ではなかったろう。
1/12、2/12、3/12 と折り返し登るごとに標識が進んでいく。

 

着実に、そして確実に前に進んでいるという感覚が嬉しい。
100kmウォークだと1km歩かないとそんな標識ないもんね。

9時13分。登山開始から1時間が経過。
「十二曲り 12/12」を通過、
名前の付いている道を踏破するとちょっと嬉しい。

 

一息付いて、冷たいポカリを喉に流し込む。
五臓六腑に沁みわたるこの味、マズいはずがない。

しかし、名所「十二曲り」を抜けると
登山道の様相は一変した。

今までの散歩道のように整備された道はむき出しになり、
傾斜も比較にならないほどきつくなる。
岩と木々の根を階段のようにして登る道が続く。

太陽が昇ってきたせいか、黒沢での涼しさが嘘のようだ。
急勾配も手伝って額に汗が浮かぶのが分かる。
汗をぬぐいつつ前に、そして上に進む。

登りながら上を見上げると、時折木々の隙間から空が見え、
そこに青い空と、白い雲が見える。

 

すっかり夏色の空だ。暑い。

9時40分。登山開始から1時間半が経過。
「富士見平分岐」に到着。

 

妙高山と火打山、
それぞれの山頂を目指す登山道の分岐点だ。

「富士見平」というくらいだから
どこかから富士山が見えるのか、
それとも「不死身」の音が派生してそうなったのか、
温泉街はそのあたりの由来を調べると
面白いエピソードがざくざく出てくる。
興味のある方は調べてみるといい。

でもまぁ、たぶんここの場合は、
新潟県の郷土富士「越後富士」こと妙高山が
見えることからそう名付けられたんだろう。

鬱蒼と茂った木々に囲まれているのと、
普段見ている妙高山とは角度が違うせいで
見えている山々のどれが妙高山なのか分からないのだけど、
この調子ならあと数時間で山頂に行けるはず。

この分岐を進めば、いよいよ北信五岳の最高峰、
妙高山に入っていく。


→その4に続く
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