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撃ち抜けないのは、美女の心と物事の急所だけさ。
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<前回までのあらすじ>

→富士登山2012 その1 -初めての富士山-
→富士登山2012 その2 -登山の心得-
→富士登山2012 その3 -吉田ルート-
→富士登山2012 その4 -八合目~九合目-

 

吉田ルート最後の山小屋となる「御来光館」でしばし休憩したのち、
キューブ君、にゃごちゃん、ヤマグチ君と共に
再び山頂を目指して登り始める。

日の出予想時刻の4時43分まで、あと40分。

ヘッドライトがジグザグに続く登山道の先に視線をやると、
少し先にひときわ明るい光が見える。

きっとあそこがゴール。
ついに山頂が見えてきた。

左手にも光の道が見える。
あれは別の登山ルートか、それとも下山道か。

いずれも登山客でびっしり埋まっているようだ。
ゆっくりゆっくり光が登っていくのが見える。

後で知ることになったのだけど、吉田ルートの登山道と下山道は、
本八合目の山小屋「江戸屋」付近から
お互いに行き来ができるようになっている。

「もしかすると、この混雑状況を見た一部の登山ツアーが
 下山道を逆走して登り始めているのかもしれない」

他の登山客がそんなことを話しているのが聞こえてきた。

そんな登り方もあるんだな。

帰りのバスの時間が決まっているから、
ご来光を見たらすぐに下山しなきゃいけないらしい。

登りの混雑がひどいと、時間的な余裕はさらに厳しくなるから、
時々そんなツアーガイドを見かけるそうだ。

でも、正直そこまでして山頂で御来光を見なくてもいいかなぁ。
振り向けば、そこは視界いっぱいに広がる大パノラマが広がっている。

今回は、それで充分だ。

ウチらはウチら。
登山道の途中で、日の出を迎えよう。


八合五勺の標識を越え、九合目の鳥居が見えてきた。

風雨に晒され、激しい寒暖差で古くなりひび割れた鳥居には、
小銭がいっぱい詰まっていた。

誰が始めたのか分からないけれど、気持ちは分かる。
でも実際に自分はやったことがない。

そもそも有料トイレ用にと思って持ってきた
小銭を受け取る神様も気の毒だし。


空は、地平線の先から徐々に赤らんできていた。
月明かりに照らされた岩肌が明るい。

あまりに明るくて、
自分のヘッドライトの光が弱くなってきていることにも気が付かなかった。

そういえば、つくば100キロウォークでも
このヘッドライトで夜通し道を照らしながら歩いていたな。

あのときはヘッドライトに向かって小さな羽虫が突っ込んできたものだけど、
標高 3,000m を越えると虫らしい虫もいない。

森林限界はとうの昔に越えて来た。
思えば遠くに来たものだ。

凛と張った冷たい空気が火照った身体に心地よい。

山頂付近の気温は4度くらいって話だ。
微かながら風もあるし、体感温度はきっともう少し低い。

空気が薄く、普通に呼吸しているだけだど少し息苦しい。
歩きながら、大きな深呼吸を繰り返す。

息切れするほどのペースで歩いている訳じゃないのに、
それでも動悸が激しい。

心臓も身体中に酸素を送り込むためにフル稼動しているようだ。

吊り橋理論じゃないけど、言われてみればここまで一緒に頑張って、
励まし合って登ってきたメンバーが愛おしく感じる。

これは異性と登れば間違いなく恋に落ちる音がするはず。
危険だ。富士山は危険だ。

このヘッドライトと歩くときは、いつもこんな状態だな。
そういや電池を変えてくるのを忘れてた。


前の人が進めば、ウチらも進む。
前の人が立ち止まれば、ウチらも立ち止まる。

追い抜くようなスペースはほとんどない。

周囲を見渡すと、いつの間にか座り込み、
ご来光を見ようと準備をしている人が大勢いることに気が付く。

もうそんな時間なんだ。

振り向くと、刻一刻と姿を変える朝焼けの空に目を奪われる。

徐々に色づいてくる雲海の隙間から、微かに街の明かりが見える。
三日月型の湖も見える。山中湖だろうな。

再び視線を戻す。前の人が進んでいる。ウチらも進む。
立ち止まり、再び振り向いて景色を眺める。

しばらくの間、ずっとそんな感じで歩いていた。


現在地は九合目の鳥居と山頂のちょうど中間地点くらいだろうか。
登山道には人が溢れ、山頂までずっと行列が続いている。

進まない、進めない。

あと少し、もう少しだけ山頂に近い場所で、と考えて
登ってきたけれど、きっと、ここが限界だ。

これ以上チャレンジしても、
御来光が終わるまで恐らく状況は変わらないだろう。

山頂も満員で入れないんだろうなーなんて思う。
上が詰まっているから、この人たちも動くに動けないんだ。

キューブ君、にゃごちゃん、ヤマグチ君と相談して、
ここで御来光を迎えることにしよう。

聞いてみたら、みんな同じ気持ちだったみたい。
声を掛け合い、登山道の脇に移動する。

ほどんどの人がそうしているように、
登山道から1歩外れた山側の斜面に腰を下ろす。

時計を確認すると、4時30分。
御来光まで13分。

深呼吸をして、カメラを構えて、写真を撮って、
馬鹿な話をしながら御来光を待つ。

見渡す限りの大パノラマ。

空が、雲が、森が、街が、ただそこにあるだけなのに、
嘘みたいに美しい。

それらが徐々に、少しずつ少しずつ赤く染まっていく。

どこかの物語の迷い込んでしまったような、幻想的な風景だった。

写真を撮るのも忘れて、ただただ眺めていた。
気が付いたら、涙が流れていた。

達成感から来る涙ではないと思う。
だってここは山頂ではないから。

綺麗なものは、ただそれだけで人の心を打つんだ。

絶景ってのはこういう景色を言うんだろう。

100キロウォークのゴールで見た景色とは違う。
マラソンを走り切った先で見た景色とは違う。

富士山には、富士山の景色があった。
そしてそれらは、他と比べられるものではないんだ。

つきっこの他のメンバーはどうしてるんだろう。
先発隊はもう山頂に着いたんだろうか。

あららちん、ちーちゃん、ウコンさんの3人は
今どのあたりにいるのかな。

でもきっと、今この瞬間はこの景色を見てるに違いない。

せっかくなら一緒に見たかったけど、
こればかりは仕方のないことだ。

嫁とも一緒に見れたらいいのに。
こんなに綺麗なのに。帰ったら写真を見せて説得してみよう。

※無理でした

どれぐらい時間が経ったんだろう。

いつの間にか太陽はすっかり顔を出し、
周囲はずいぶんと明るくなっていた。

見上げれば、一面の青空が見える。
山肌で御来光を見ていた他の集団も、次々と登山道に戻っていく。

登り始めた登山客が動き始めるまで、
しばらくそのまま斜面で休憩をしていた。

そろそろ行こうか。

御来光は見た。
次に目指すは、日本の頂!


御来光を見た場所から、山頂までは本当にあっという間だった。

あれほど動かなかった登山道が嘘みたいにスムーズに進んでいった。
やっぱりみんな御来光を見てたんだ。

5時30分。スタートからちょうど8時間が経過。
キューブ君、にゃごちゃん、ヤマグチ君、桶屋の4名は山頂に到着した。

とうとう辿り着いた。4人とも無事に登ってこれた。
山頂で記念撮影。

山頂の売店を抜けて、少し広くなった岩場で
moonさんたち先発隊と合流。

堅い握手を交わす。

下のコンビニで買ってきたおにぎりが美味い。
売店で買った温かいコーンポタージュ(400円)がめちゃくちゃ美味い。

売店で温かいラーメンも売っていた。
日本一高いところにあるラーメン屋なんだろうな。

値段も高そうだ。
まだ早朝だというのに、ものすごい活気。

それぞれ荷物の整理をしたり、横になって休んだりしながら、
他のメンバーが来るのを待つ。

その間、かねてより山頂に郵便局があるって聞いていたので、
持ってきた嫁宛ての葉書にメッセージを書いた。

喜んでくれるだろうか、なんて考えながら郵便局を探した。
ても、見あたらない。

売店のあんちゃんに確認したら、
どうやら郵便局は吉田ルートの頂上から20分くらい歩いた先にあるらしい。

売店で買った葉書なら売店の人が届けてくれるみたいなんだけど、
持ち込んだ葉書だと届けてくれないみたいだ。

ここからさらに20分も歩くなんて嫌過ぎるので、
結局、葉書は下山後に嫁に手渡した。

もはや何が何だか(笑)


6時過ぎに、大島君と中山さんが来た。
7時ちょい手前ぐらいに、あららちんも来た。

でも、ちーちゃんとウコンさんは登って来なかった。

九合目付近でちーちゃんが体調を崩し、
ウコンさんはそれに付き添い一緒に下山をしたそうだ。

100キロともマラソンとも違う、富士山の難しさを感じた。


11人が揃ったところで、かのかと一緒に
カービィさんが買ってくれたヘリウムガスを吸ってヤッホーをした。

リュックはパンパンだったけど、
これだけは絶対に持って行けと言われてた。

みんな爆笑してた。
持ってきた甲斐があった。

軽いけど嵩張るんだよね。

本当はカップヌードルもここで食べる予定だったんだけど、
マイクロバスの時間が迫っていたので、それだけは諦めることにした。

これも結構嵩張ってたんだけどね。
ちょっと残念。もし食べてたら死ぬほど美味かっただろうな。

最後に、登ってこれた全員で記念撮影をした。

何枚も、何枚も撮った。
どうだオレたちここまで来たぞって、勲章みたいな写真だ。

きっと一生忘れられない思い出になる。
ここが富士山の頂上だ。


山頂にあるもうひとつの鳥居を抜け、
一行は下山を開始する。

そこでウチらは身を持って思い知らされることになった。

登って来た分は、降りなければならない。
当然の理。当たり前のことだ。

山頂はゴールじゃなかった。
まだまだ続く、富士山の折り返し地点に過ぎなかった。

マジかよ・・・

長い長い富士登山の体験記。
あともう少しだけ、お付き合いください。


→その6につづく

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※この記事は、2010年09月25日にmixiで投稿したものを転載したものです。


─────────────────────────────────

回らないメリーゴーランド。
ジェットコースターは動きを止め、観覧車はただ静かに鎮座する。

誰もいない遊園地。

しかし出口はどこにもない。
あなたはこの広大な夢の世界に閉じ込められてしまった。

リアル脱出ゲーム史上最大規模でお送りする、夜のミステリーイベント!
最大にして最高傑作! 謎の遊園地にようこそ!

※雨天決行!荒天中止!!

─────────────────────────────────

リアル脱出ゲームとは、部屋中に隠されたアイテムや暗号を集め、
制限時間内に謎を解いて脱出する参加型ゲーム。

今回は、東京神奈川の県境にある遊園地「よみうりランド」を貸し切り、
閉園後の19時から、夜の遊園地を舞台に開催された。

しかしイベント当日、同行する嫁の雨女っぷりが本領を発揮、
よみうりランド周辺には大雨・洪水・雷注意報が発令される緊急事態。

「中止」か「決行」か。
参加者たちは、注意深く当日の天気予報を見守る。

15時。主催するSCRAPはある一つの決断を下した。


・・・「決行」と。


もちろん参加しない理由など無い。

なぜなら、そこには俺を待つ多くの謎があるからだ!!!!!

 

 

 

 

 

・・・という訳で参加してきました。


冷たい秋雨降る、夜の遊園地。肌寒いながら、心は熱いです。

知識的なことを問う謎はなく、
瞬時のひらめきと、気づきの発想が勝負だと感じました。

あと、この日に限っては気力と体力も重要な要素だったかもしれません。

歴戦の猛者達が集まるイベント初日の脱出率が10%程度。

初参加者が増えてくる2日目以降の脱出率は5~6%程度だったそうですが、
この日、イベントに参加した1,000名のうち、
脱出成功者はわずかに4組、11名。

脱出率にして、1.1%・・・ッ!

ただでさえ難しい問題に、悪天候という条件が加わり、
広い遊園地内を散策することすら困難に。

過酷すぎ(笑)

公演は9月26日まで行われるためネタバレになるようなことは書けませんが、
悪天候なんてそっちのけ、それでもめちゃくちゃ面白かった!!


周囲の謎が解けない人達を尻目に、
いちはやく謎を解いてゲートを通過したときの快感。

一見でたらめに見える文字列に、ひとつの法則を見つけたときの高揚感。

・・・楽しい、楽しいぞぉぉぉっぉ!


次回の東京開催公演は10月、舞台は超高層ビル「東京ミッドタウン」。
12月にも、ある「スタジアム」にて開催を予定しているとか。

ちょっと普段より料金が高めなので悩むところなのですが、
ご興味があればこの機会にでも。


東京リアル脱出ゲーム「夜の遊園地からの脱出」~ネタバレレポート前篇~
http://oke.iku4.com/Entry/103/

東京リアル脱出ゲーム「夜の遊園地からの脱出」~ネタバレレポート後篇~
http://oke.iku4.com/Entry/104/
 


▼東京リアル脱出ゲーム公式サイト
http://realdgame.jp/v/top/

▼SCRAP公式サイト「ファッションショーの華麗な秘密」
http://www.scrapmagazine.com/wps/archives/6165.html

<前回までのあらすじ>

→富士登山2012 その1 -初めての富士山-
→富士登山2012 その2 -登山の心得-
→富士登山2012 その3 -吉田ルート-



富士八合目。

長い長い富士山の登山道の中で、
八合目から九合目までの道のりがぶっちゃけ一番つらかった。

傾斜がきつくなり、登るペースが落ちてきたせいもあるのだろうけど、
とにかく山小屋から山小屋までが長い。

標高も 3000m を越え、気温もずいぶん下がってきた。

歩き続けているときはよいのだけれど、
混雑で前に進めずやむを得ず立ち止まると、
真冬並みの気温が容赦なく体力を奪っていく。

これまで全く気にならなかった風も吹き始め、
ゴツゴツとした岩を這うようにして登っていく。

幸いなことにこの段階でも高山病の気配はなく、
また身体の痛みも眠気もなかった。

一緒に登っていたキューブ君も、
自身の経験上、この感じでここまで登ってこれているなら、
山頂までは間違いなく行けると思う、と話していた。

山頂まで登れる。

その言葉が何よりの励みになった。

つくば100キロウォークのときも、どんなにしんどくても、
このペースを維持さえしていれば時間内にゴールに辿り着けるって
確信があったからこそ、途切れかけた気持ちを支えることができた。

富士山にはまた別の辛さがあるし厳しさがあるけど、
少なくとも身体が自分の意思の通りに動かせる間は、
「よしイケるぞ」って手ごたえが何よりの元気になると思う。

気持ちを切らさぬよう、
1歩、また1歩とゆっくりゆっくり歩みを進める。


山小屋「蓬菜館」を無事通過し、一行は「白雲荘」に到着。
時刻は午前2時を少し回った頃。

スタートから4時間半が経過、
日の出予定時刻までは残り2時間半。

何だ、まだ4時間しか登ってないのかって思う。
それと同時に、あと2時間以上も登らなきゃいけないのかとも思う。

混雑と傾斜で、あとどれくらい歩き続ければいいのかが
わからなくなってきていた。

そもそも距離の感覚が平地とは全く違う。

吉田ルートは、スタート地点となる富士スバルライン五合目から
ゴールとなる山頂、久須志神社まで
標高差 1,400m、距離にして 7.5km ある。

7.5km 。

平地で歩けば2時間の距離。

正直、たいした距離じゃないよね。

たとえ山道で倍の時間がかかったとしても、
4時間あればなんとかなるんじゃないか・・・なんて考えてた。

そんな自分をぶっとばしたい。

しんどい。

混雑で思うように進めない部分を差し引いても、
1時間 1.2~3km くらいのペースで歩くのがやっとだった。

ゆっくり、ゆっくりと意識して歩いてきたつもりだけど、
それでも体力的にはギリギリだったと思う。

太ももがパンパンだ。


標高 3,250m にある山小屋「元祖室」を抜け、
ほどなく歩くと再び標識を発見。

いよいよ九合目か!と期待して近付くと「本八合目」の表示。

八合目は、これがあと2回くらい続く。
「元祖八合目」も「八合五勺」も知らんがな(笑)


この頃になると、山小屋だけでなく道中でも端に寄って
マメに休憩を挟みながら登るようになっていた。

携帯電話のバッテリー残量が心もとないため
桶屋の携帯電源はOFFに。

今後のメーリングリスト送受信はヤマグチ君へお願いする。

携帯電話の電波は、八合目であっても
docomo、au、SoftBank、キャリア問わずちゃんと受信できるみたいだ。

さすがは富士山だなって思う。
それとも吉田ルートだからなのだろうか。

2時48分。
moonさん、カービィさん、かのか、につけちゃんの
先発隊は「トモエ館」にいるみたい。すぐ近くだ。

2時45分。
大島君、中山さんの2名は「元祖室」に。

2時58分。
あららちん、ちーちゃん、ウコンさんは「白雲荘」まで来ている様子。

みんなそんなに離れてはいないみたい。
あと少しだ。よっしゃ頑張ろうぜ!


本八合目「富士山ホテル」や「トモエ館」を抜ける頃になると、
登山道はいよいよ大渋滞。

山小屋に宿泊していた登山客も次々と山小屋から出発し、
お隣の須走ルートから登って来た登山客とも合流する。

ただでさえ狭い登山道に人が溢れてきた。

前が進めば自分も同じように進み、
前が詰まれば、動き出すまでしばらく休憩のような感じになる。

ご来光を見ようと隙間を縫うように人をかきわけ登る人、
とりあえず山頂まで登れればいいやとゆっくり登る人、
体力の限界を感じて下山道へ戻ろうとする人、
道のド真ん中で突然休憩を始める人。

それぞれの動きが混雑に拍車をかける。

前を見ても後ろを見ても人、人、人。

不謹慎かもしれないけれど、そしてホントにどうでもいいことだけど、
気圧の関係なのか歩くたびにおならが出た。

一緒に歩いていたキューブ君、にゃごちゃん、ヤマグチ君には
さすがに申し訳ないと思って一番後ろを歩いていたけど、
その自分のさらに後方にも他の登山客がぴったり後をついてくる。

高低差があるため、ちょうどお尻のあたりが
後ろの人の顔のあたりにくることもあるけど、
そのあたりはお構いなしにぶっぱなす。

犠牲になった方には申し訳ないけれど、
細かいことは気にしないことにしよう。

八合五勺にある「御来光館」が最後の山小屋。
ここを抜ければ、鳥居のある九合目まで、あと少し。

気が付いたら標高は 3,450m に達していた。
時刻は4時。

背中越しに見える地平線が
だんだん赤く、明るく染まってきているのが見える。

日の出が近いんだ。
山頂まで登るのは、ちょっと厳しいかもしれない。



→その5に続く

<前回までのあらすじ>

→富士登山2012 その1 -初めての富士山-
→富士登山2012 その2 -登山の心得-



登山開始から1時間半、七合目の区切りとなる山小屋「花小屋」に到着。
先発隊のカービィさん、かのか、につけちゃんと合流する。

六合目から七合目にかけて徐々にパーティはバラけ出し、
自分はずっとキューブ君、にゃごちゃんと3人で歩いていた。

キューブ君は今回で富士登山4回目となるベテラン、
ルービックキューブが趣味で、
2006年には趣味が高じてTVに出た事もあるスピードキュービスト。

だからキューブ君、キューブ君って皆に呼ばれてる。
つきっこのイベントには初参戦。


にゃごちゃんは、去年の東京マラソンで初めてお会いした女の子。

『魔女の宅急便』の魔女キキのコスプレをして、
デッキブラシを担ぎながらフルマラソンを完走した剛の者。

今年のつくば100キロウォークも一緒に参加した。
彼女も富士登山の経験者だ。


少し遅れて、大島君と中山さんの2人も合流。

情報共有のため、チームのメーリングリストに
現在地と合流した8名のメンバーの名前を書いて送信する。

moonさん、あららちん、ヤマグチくん、ちーちゃん、ウコンさんの5人は
もう少し下にいるみたいだった。

これから先の混雑を考えれば、待つには少し距離が離れ過ぎている。
何度か深呼吸をして、再び皆で歩き出すことにした。

ここから先は日の出館、トモエ館、鎌岩館、富士一館、鳥居荘、東洋館と
しばらく山小屋が連なるように設置されていて、
深夜でも飲料水や軽食が購入できるようだ。

飲料水も携帯食糧も充分な量を持ってきたつもりだけど、
いざとなればすぐに補給ができると思うと、気持ちも楽になる。

山頂まで続く登山客のヘッドライトの明かりが道のように見える中で、
ひときわ大きく光る山小屋の光が頼もしく思えた。

8月4日の日の出予定時刻は4時43分。
残り5時間。


キューブ君、にゃごちゃん、桶屋の3人が
日の出館、トモエ館を過ぎ、救護室を抜けて鎌岩館に差し掛かる頃、
moonさんから日の出館にいるよと写真付きのメーリングリストが届いた。

moonさんもペースが上がってきたみたい。

同じくして、先発隊のカービィさん、かのか、につけちゃん達が
鳥居荘周辺にいると返信が届く。

先発隊はえー(笑)

でも、各チーム、それぞれのペースで山頂を目指しているものの、
そんなに大きくは離れていない様子。

みんな頑張ってる。自分も前に進もう。


時刻は0時20分、登山開始から3時間が経過。
キューブ君、にゃごちゃん、桶屋の3人も鳥居荘に到着。

鳥居荘から東洋館までの登山道は、急勾配の岩肌を登っていくため、
このあたりから急に道が混雑し始める。

前が詰まっているようで、身動きがとれない。
休憩がてら、後続の5人を待つ。


しばらくするとmoonさんが勢いよく登って来た。
なんでこの人こんなに元気なんだろう(笑)

日の出まで残り4時間、今日のこの混雑状況を踏まえれば、
山頂でご来光を眺めるにはギリギリかもしれない。

そう思ってペースを上げてきたみたいだった。
ここぞの集中力はやっぱさすがだよね。

一緒に登るのかな、と思いきや、
「それじゃ俺いくわ!」と彼は跳ねるように登って行った。

moonさんはもっと標高の高い街に住むべきだな。
あんなに元気なmoonさんはそうそう見れるもんじゃない。

元気過ぎる。


そうこうしているうちに、ヤマグチ君も追いついてきた。

ヤマグチ君とは去年の100キロウォーク以来の「戦友」だ。
つきっこメンバーの中では数少ない花の独身20代。

ここから先は、キューブ君、にゃごちゃんに加え、
ヤマグチ君、桶屋の4人で登ることに。


1時3分、先発隊のカービィさん、かのか、につけちゃん達から
八合目の山小屋「太子館」に到着したとの連絡がメーリングリストに入った。

ほどなくして、moonさんも太子館着との連絡が入る。
無事に合流できたようだ。

この時点で先発隊が4名、
moonさん、カービィさん、かのか、につけちゃん。

次に大島君、中山さんの2名が続き、
そのすぐ後方に我々4名。

後続にはあららちん、ちーちゃん、ウコンさんの3名が続く形になった。


1時20分、やっとの思いで八合目「太子館」に到着。

標高 3,100m の標識が嬉しい。とうとう 3,000m 超え!
山頂まで700mを切った。

しかしながら日の出までは残り3時間、実に微妙な感じだ。
でも、ここまで来ると必ずしも山頂でご来光を見れなくても
別に構わないような気がしてきていた。

吉田ルートを選んだ理由は、他のどの登山ルートよりも山小屋が多く
未経験者でも登りやすいって点が一番なのだけど、もうひとつ、
山頂まで行かなくても途中でご来光を眺めることができる点も魅力だった。

見れないのは悔しいけど、でもここまで来れればどこでも見れる、
そう思うと不思議と焦る気持ちは湧いてこなかった。

だって、この段階で空気がスゲー美味しいんだぜ。
今までに味わったことのない凛と澄んだ味がする。

眼下に広がる夜景も素敵ならば、見上げれば満天の星空。
ああビールが飲みたい。


地図を確認すると、八合目の次は元祖八合目、本八合目、八合五勺と、
少し歩くごとに色んな名前の八合目と出会えるようだ。

ああこれが噂の・・・と思う。

山小屋も太子館を皮切りに、蓬菜館、白雲荘、元祖室、
富士山ホテル、本八合目トモエ館、御来光館と続く。

吉田ルートはホントに山小屋が多い。

持ってきた500mlペットボトル×2本ももうすぐ飲み終わる頃。
飲み切る前に、どこかで補給しないといけないなと考えていた。



→その4につづく

<前回までのあらすじ>

→富士登山2012 その1 -初めての富士山-


すっかり日も落ちた富士スバルライン五合目。
季節も8月だというのに、肌寒い。

出発時刻が近づくと、マイクロバスを下りて皆で広場に集合した。
各自トイレを済ませ、準備体操とストレッチを入念に行う。

メンバー全員で集まって記念撮影を終えると、
今度はスタート地点の前で円陣を組む。

つくば100キロウォーク大会のときも、
マラソン大会のときも必ず行う、つきっこの恒例行事みたいなものだ。

ここで皆といくつか確認をする。


・各自のペースで登り、決して無理はしないこと

・真っ暗な山道、1人で登ることだけは避けること

・山頂での過ごし方、そして下山後のスケジュール

・万が一途中で下山してしまった場合の集合場所

・メーリングリストによる情報の共有


どれも大事なこと。
何かが起きてからじゃ遅いから、ちゃんと頭に叩き込んでおく。

山は油断してると命に関わる。

21時30分、いよいよ登山開始。
まずは六合目を目指して、暗い山道を歩きだす。

いっくぜぇぇぇぇぇ( ゚Д゚)!


見上げれば、空は雲ひとつない満点の星空。

ヘッドライトは付けていたものの、
月が明ることもあって、足元はかなり明るかった。

吉田ルートの“登り始め”は、しばらく緩やかな下り坂が続いていた。
ちょっと変な表現だけどね(笑)

千里の道も一歩から。
100キロウォークだって富士山だって、その原則は変わらない。

時には談笑しながら、時には黙々と、
そして時にはすぐ目の前に広がる景色に心奪われながら歩みを進める。

いやね、実を言うと5合目は車で行けるってこともあって、
たいしたこと無いんじゃないかと思っていた部分もあったんだ。

でも、登り始めてすぐに反省。

スタート地点とはいえ標高は 2,305 m、
眼下には、この時点でかなりの絶景が広がっている。

あの街の光は吉田市だろうか、すごく綺麗な夜景が見える。

必ずしも山頂まで登る必要はないけど、
富士五合目までだけでも来る価値は充分あると思った。

歩き始めてしばらくすると、
富士山安全指導センターがあった。

そこで簡易的な地図をもらい、再び6合目に向けて歩きだす。

この地図はコースはもちろん、山小屋や標識の位置も載っていて、
メーリングリストで次々と送られてくる仲間の現在地を
把握するのにすごく役にたった。

さすがは吉田ルート、毎年多くの観光客と登山客が訪れるだけあって
こういう配慮はすごくありがたい。

富士山安全指導センターを抜けたら、
六合目はもう目と鼻の先だった。


六合目に到着すると、そこで最初の休憩をとった。

ゆっくりゆっくり、
深呼吸をするように大きな呼吸を繰り返す。

今回の富士登山にあたっては、
周囲の登山経験者から多くのアドバイスをもらった。

具体的には、この動画を作成した方(笑)

http://www.nicovideo.jp/watch/sm4337749


こういうスキルが無駄に高い、実に尊敬できる先輩だ。
深呼吸はそのアドバイスのうちのひとつ。

・思い立ったが深呼吸、兎にも角にも深呼吸

とにかく気が付かないうちに身体の中から酸素が抜けていくから、
休憩の都度、これでもかってくらい深呼吸した方がいいよ、と。

今回の富士登山は特に、夜の21時半から登り始め、
夜通し山頂を目指して歩き続ける弾丸ツアー。

途中にある山小屋で身体を慣らすこともできないから、
高山病対策が非常に重要だった。

低酸素状態にならないように、休憩の都度、そして
ちょっと立ち止まったらときにも、はたまた歩きながらでも、
いつでもどこでも意識して深呼吸を心がけた。

おかげで高山病になることもなかったよ。


もうひとつ意識したのが歩行速度。

・普段は2歩で行ける距離を、3歩で歩くよう進む。

これは高山病対策の意味もあるけど、体力面のケアもあると思う。

今回参加したメンバーは、
自分を含め何人かが100キロウォークの経験者。

歩き続けるだけなら24時間だって歩き続けることができるメンバーだけど、
でも平地と傾斜地では使う筋肉も違うし、体力の消耗度も全く違う。

無理してバテバテになってしまったら、登れる山も登れない。

少なくとも富士山の難易度であれば、
ご来光はともかく、山頂が逃げることはない。

今回は、何を差し置いても頂上まで登ることが目的だから、
無理にペースを上げる必要もない。

このゆっくりとしたペースがなければ、
きっと登り切ることはできなかったと思う。


六合目の休憩ポイントを抜け、今度は七合目を目指して
砂の斜面をジグザグに登っていく。

道が薄暗いからあまり見えないけど、
たぶん砂埃とかもの凄いんだろうなって思った。

月明かりに照らされた山肌がごつごつしているのが見える。

富士山って、遠目から見るとこれ以上ないくらい美しい姿形をしてるけど、
実際に登ってみると岩と砂だらけでボコボコなんだな・・・

このあたりの道はぶっちゃけかなり単調だ。
ペースを維持しつつ、折り返し地点ではこまめに休憩をはさみながら、
最初の山小屋を目指して黙々と歩き続ける。

しんどい・・・

登山客のヘッドライトが延々と連なっているのが見える。
頂上はまだ遥か彼方にあるように思えた。


→その3につづく

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プロフィール

HN:桶屋が儲かる

多感な青春時代に
伊集院光を聞き育つ。

撃ち抜けないのは美女の心と物事の急所だけさ。

since 2012.6.21
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